今日は一日中黙々と照明計画を練っている。
建築の仕事は想像通りとてもハードだ。
先日も少し触れたが、人が暮らす場所をつくるということは、
表に見える格好の良いデザインだけではなく、
例えばコンセントやスイッチをどこに付けるかなど
細部に至るまで意思決定しなければいけない。
途方に暮れる程の数の項目について検討&意思決定するわけだが、
それらの過程において最も必要な能力は何かと言うと、
意外かもしれないが、お客さんに感情移入しようとする根気強さではないかと思う。
感情移入できる能力と言ってしまうと、
あたかも私ができていると言っているようだがそうではなく、
そうしようとするしつこさが必要なのだ。
ハードな仕事の目的を考えると、ただ一つ、
お客さんに喜んでもらうことしかない。
住宅はとてもプライベートなもの。
お客さんの人生の表現の場であり自己満足の結晶のようなものだと思う。
外観の集合が街並みを形成していることを考えると公の要素ももちろん備えているが、
街並みに貢献しているが住人は気に入っていないとしたらそれを提供した人は落第だと思う。
仕事をするということは、誰かの役に立つということだ。
誰かに感謝してもらえるように役に立つ。
「ありがとう」と言ってもらうだけでそれまでの苦労は帳消しになるし、
「頑張って良かった」と思える充足感は生きていることの意味さえ与えてくれる。
頑張りが大きければ、同じ振れ幅で大きな充足感を得られる。
人を喜ばせたいと考えるのは人間の本能なのだろう。
何かの本で、人間が二足歩行になったのは獲物や水を仲間に届けるために
道具を使うようになったことに起因しているのではないかという説を読んだことがある。
つまり喜ばせたい思いが二足歩行させ、他の動物との差を生んだということだが、
真偽はともかく、納得できる話だと思う。
欲求がなくては進化はあり得ない。正しい欲求を持つことが正しい進化を遂げるエンジンになる。
今日もお客さんを喜ばせるために時間を惜しんでいない私たちは正しく進化していけるはずだ。