CASE 07 滋賀県の和風邸宅
琵琶湖を眺める豊かな立地に建つT邸。代々日本庭園を中心とした造園業を営むご家族の住まいには、昔ながらの伝統的な日本家屋と、40年の歳月をかけて育てられた美しい庭園が配されています。
T邸の建築は広い敷地を現代的に活かすため、既存建物のリフォーム・改築、造園事務所および蔵の解体、住宅の新築と大きなプロジェクトになりました。その設計コンセプトは「建築と庭の共生」。伝統的な日本家屋の趣きと、ご主人が40年間育て上げた美しい庭園。その2つを最大限に生かし、相乗効果が生まれるような「共生」がテーマとなりました。
まず行ったのは、既存部を含む各部屋の用途を明確にし、改めてゾーニングすること。T邸は、「客間は日当りの良い場所に」という昔ながらの日本家屋であり、北側の暗い場所に生活が集中していました。快適な生活のためには、その生活拠点を最も条件の良い場所へ移す必要がありました。新しいゾーニング計画では、既存部の1階に事務所の機能を移管し、元の生活拠点だった北側に水廻りを改築、以前の事務所と蔵を解体してできたスペースに生活の中心となるLDKを新築しました。新たにつくられたLDKは、南に面した明るい場所を確保しただけでなく、門扉から玄関までのアプローチとして通るだけだった庭を、リビングの大開口を介して生活に取り入れることで、日常空間の一部へと昇華させました。そのことは設計コンセプトにおける重要な役割を果たしています。
建築が織りなす直線の美と、樹木が織りなす曲線の美。二線それぞれが主張と尊重を繰り返しながら重なり、他にはない上質な住まいが生まれました。
LDKから庭園を望む。中央に見える大開口は庭園を1枚の絵として切り取るための大きなピクチャーウィンドウとなっている。庭園までの間には広さのあるストーンデッキを設け、内部・外部の境界を曖昧にしている。境界を柔らかにするこの工夫によって、屋内からより身近に庭園を感じることができる。屋内はタモの柱・梁・幕板など木質の味わいある空間となっており、庭園の色彩とのコントラストが美しい。
「格式高いモダンな和を」というご主人のご要望を受け設計した和室。壁にはジュラク、造作材にはすべて無垢タモ材を使用し、格式を重んじながらモダンな仕上げに。床に敷いた大板の黒御影は、少し浮かせることで見た目の重さを和らげている。
PAGE: 1 / 7