CASE 11 角地の家
終日車の往来が盛んな道路に面したT邸は、南東が接動した角地に建っています。大きな道路に面した建物は街並みや通りの印象を変えてしまう程の影響力があるため、個人の住宅ではありますが公共性も意識した設計となりました。角地の家は両サイドに建物が建っている場合と異なり、斜めから見た外観が道路=公に晒されます。T邸では北に広がる山並みとの色彩調和や、塀・建物の高さ、外構と建物の一体感などについて、模型製作やスケッチを繰り返して慎重な検討を重ねました。
プランは、ヤマボウシをシンボルツリーとした植え込みをコ型のウッドデッキで囲み、その中庭をコ型の建物で囲む形になっています。道路から見ると塀の高さは2.5mありますが、家の床は地面より60cm高くなっているため室内からの見た目は1.9mの高さに抑えられ、圧迫感を感じません。また塀をコンクリート造にすることで道路からの騒音を跳ね返し、閑静な環境を作りだしています。おかげでLDKは、静かで安心な中庭に解放でき、十分な採光を確保するとともに、ウッドデッキをアウトリビングとして活用できる住宅となりました。
デザインと機能を両立したT邸。今後、経年変化によって魅力を増し、大切に住み継がれていくことを願っています。
リビングは一部天井が吹抜けており、吹抜けを介して南と東の光を採り込んでいる。「子供が安全に外でも遊べて、屋内から常に目が届くようにしたい」という奥様のご要望を受け、コ型で中庭を囲ったプランとなっている。
夜のLDK。タイル面に設置したブラケット照明がタイルの凹凸を照らし出す。ダイニングキッチンに設置された間接照明が天井面を明るく照らし、賑やかな団欒の場を演出している。塀のタイルやヤマボウシもライトアップし、空間に奥行きを与えている。
東側外観。建物外壁の一部にも塀と同じタイルを採用し、外構と建物の一体感を図った。また、2.5mの塀が通りに対して圧迫感とならないよう、塀上部の意匠を切り変え、塀の高さが実際より低く見えるよう工夫した。沿道の灌木が無彩色の塀に映える。
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