CASE 20 二条通の家
世界文化遺産 二条城の近く、二条通沿いにW邸は建築されました。接道間口4.8m、奥行き24mの京都らしい細く長い敷地です。W様ご主人はこの地で生まれ育ち、土地への愛着は深い反面、日中は電気を要する暗い住まいに不満を募らせて暮らしてこられました。ご相談をいただいた当初は、今より利便性は劣る場所でも良いからもう少し広い土地への住み替えも選択肢の一つとされていました。そんななか、あるご縁でプランをご提案させていただく機会に恵まれたのですが、ご夫婦はこの地で建替える場合は、3階建てにしなければ広々とした住まいは実現しないと思われていたこともあり、3階建てプランをご要望されました。最初はご要望どおり3階建て案を検討していたのですが、具体的に進めていく中で2階建てでも十分に明るく広々とした住空間を実現できる可能性を感じ、プレゼンテーションでは、ご要望どおりの3階建てプランと同時に2階建てプランも提示したところ、2階建て案を気に入って下さいました。
家の中が暗いことが大きな不満だったW様にとって、明るく開放的な暮らしの実現は必須でしたが、両隣の建物が敷地境界ぎりぎりに迫っており、前面道路と屋根面からの採光に頼らざるを得ない条件は以前と変わりません。従って、その条件を素直に受け入れ、前面道路に面した広いテラスを設け、リビングをそこに隣接させました。テラスは騒音対策やプライバシー確保のため、冬至における採光を妨げない高さの壁で囲い、道路からは中の様子が窺えないよう配慮しました。長細い土地なので当然建物も長細くなり、建物の中腹部から奥にかけては前面道路側からの採光は届きません。そこで南に向けた天窓を4ヶ所設け、筒状の吹抜けを介して光を採り入れる工夫がなされています。その結果、2階に配されたLDKには全体的に自然光が届き、明るく健やかな住空間が生まれました。確保できた内部空間の有効間口は4.1m程と限られているものの、広く感じられるよう天井の形状やライティング、造作家具のデザイン統一など随所に工夫を凝らし、居心地の良い豊かな住まいに仕上がったのではないかと思います。
違う場所へ移らずここで暮らしていくことを決断されたW様が満足して過ごして下されば、お子様がこの地に対する愛着をより深められることに繋がると思います。これから始まるW様の生活に大いなる満足がもたらされるよう、メンテナンスなど建築の継続的なサポートを通じて尽力していきたいと考えています。
タモの列柱は階段室との間仕切りであり構造でもある。列柱の間には透明ガラスが嵌め込まれており、視線は階段室奥の壁まで抜けるため、キッチンに立っていても圧迫感はない。また、天窓から射す光を階段室に届ける役割も担っている。
前面道路側のテラスから建物を見る。生活空間と前面道路との間にテラスを置くことで、騒音対策とプライバシーの確保に役立っている。ルーバーの裏はガラス屋根の架かった洗濯物干し場。風は通るが室内からの視線は遮る工夫がなされている。
土地間口が4.8mで両隣の家とはそれぞれ20cm程しか離れていないため、採光が最重要課題。まずは前面道路(南)側に広いテラスを配し床まで開口することでリビングへの採光を確保した。暗くなりがちな建物中央部分には4連の天窓から光を採りつつ、天窓を取ったことによる熱対策として、吹抜け上部に熱感知式の換気扇を設置した上、全ての天窓に電動ロールスクリーンを採用した。
PAGE: 1 / 7