「家ではとにかくゆっくり寛ぎたい」という要望からこの家の設計が始まりました。日常の仕事ではたくさんの人と接するF様が住宅に求めるものは、外に対しては閉じた静かな空間でした。正方形に近いゆとりある敷地のなかに中庭を囲む回廊型の平屋を置くプランを導くのはとても自然な流れでした。 平屋は、基礎や屋根が床面積に等しく必要となりコスト高になりがちですが、階段スペースが省略できたり、各部屋の天井高さが自由に設定できるなどメリットも多い。そこにプライバシーの確保が容易な回廊型プランをあわせることで、場所によって違う居心地を楽しめる寛ぎの住まいが実現しました。
リビングの天井には桐の無垢材を採用し、その一部を弧状に折り上げ最上部に採光窓を設置しました。ソファで寝転ぶと高い位置から射し込む自然光によって桐材の質感を楽しめる仕掛けになっています。ダイニングキッチンは、全体の天井高さを4.5mとし、平面的にはリビングと一体の空間でありながら、より開放的な居場所となりました。またLDKの空間は、中庭のほか敷地境界に沿った外庭にも面しており、二つの庭に挟まれた空間となっています。中庭を囲んだ回廊には玄関や洗面所、書斎などもあり、あらゆる場面において違った角度から木々を眺めて過ごすことができます。
プライバシーを確保しながら、光や風を感じ、植物を眺めながら寛ぎたい。 仕事の時間をオンとするなら、家で過ごすオフの時間に求めたF様の願いは、回廊をもった平屋の住宅へと結実しました。この住宅で過ごす時間がF様の更なるご活躍の一助となれば何よりも嬉しいことです。
玄関ホールの地窓から見える中庭の一部が、先の空間への期待を生む
細かい格子の吊り戸の先はLDK。ナチュラルな木の色合いとグレーの珪藻土が健康的で落ち着いた雰囲気に結実している
回廊に囲まれた「中庭」と外周に沿った「外庭」に挟まれたリビング。上質な天然素材で仕上げられた空間に高い開放性を与えることで、屋内にいることのストレスを最小限にする
平屋の建物ではあるが、各部で天井高さに変化をつけるため屋根の掛け方に工夫が見られる。ゆとりある敷地ならではの大らかな外観が印象的
リビングの天井は弧を描きながら折り上がりハイサイド窓から採光している
夜の外観。ライトアップされたシンボルツリーが家族の帰りを迎える
イタリア製600角タイルで仕上げられた浴室。十和田石と桧でつくられた浴槽はご主人の希望によるもの。高いデッキ塀で囲い込まれた坪庭には季節の変化を楽しめるようモミジを植えた
玄関ホールの様子
メインのアプローチから和室に繋がる露地でもモミジ、フッキソウ、ヤブコウジなどが目を楽しませてくれる
内部床とウッドデッキは同じレベルで繋がっているため視覚的な広がりが得られる
夜も中庭を楽しめるように、樹木の枝葉だけでなく地被植物も明るくなるよう照明を計画。回廊に囲われた庭では、バーベキューなども気兼ねなく楽しめる
廊下の様子。間接照明のおかげで天井に照明器具がなくすっきりした印象に
高さ4.5mの天井から吊られた照明器具やアイランドキッチン、壁に組み込まれた食器棚、キッチンと一体となったダイニングテーブルなどは、F邸のためにデザインし製作されたALLオリジナル。リビングと一体の空間でありながら天井高に変化があることで違った雰囲気の居場所となっている
二間続きの和室からは中庭と外庭を楽しめる
回廊の一角にある書斎。背面の本棚に加え書庫を備えている
開口部の向こうに見える建物が自分の家であることの安心感は大きい