CASE 23 下鴨のコートハウス
S邸が建つ敷地は京都市左京区下鴨の大通りからやや奥まった閑静な街区にあります。変形地ということもあって周囲はたくさんの住宅に囲まれているため、他人の目を気にすることなく暮らせるように、コの字型の建物を塀で繋ぎ、外ではなく内に開くコートハウスのプランとなっています。敷地形状をそのまま反映した異形の建物は、1・2階とも全ての生活の場が、建物と塀によって囲い込まれた中庭に向かって開かれており、閉鎖性と開放性を両立しています。
生活の中心となるLDKを2階に据えることで、塀の高さが気にならなくなり、明るさと開放感を得ています。庭に植えられた山採りの木の自然な樹形が目線で楽しめることも2階で暮らす利点の一つです。
RC造の特性を活かし、50帖を超える大きな空間となったLDKには柱がありません。加えて、屋内とテラスの床・壁・天井を同じ仕上げで設えることにより、内外の連続性を生み出し、外部空間も日常の生活空間の一部として取り込むことに成功しています。単純な空間構成だからこそ細部の納まりに至るまでこだわりを重ね、上質な素材も相まって、質の高い生活の場を創出できたと思います。

2階に設けたLDKはテラスと一体化し、プライバシーを守りながら四季を楽しめる空間。古いレンガやカラーガラスの壁、折り上げ天井など、素材とデザインが豊かさを生む。また、塀の上部と屋内天井の間接照明や、仕上げの統一性が内外の境界に対する意識を和らげている。

幅11mの開口部を6等分し、両サイドを開閉できるサッシとした。テラスと植栽エリアで構成されたライトコートは、約28帖の広さがあり、52帖のLDK合わせて約80帖の一空間として楽しめる。樹木の枝葉が広がった部分を眺められるのも2階にLDKを設けたことによる利点の一つと言える。

ALLオリジナルの造作キッチン。L型の天板と手元を隠すカウンターは、共にシーザーストーンで仕上げ、食洗器とIHはミーレ、レンジフードはアリアフィーナのシャンパンゴールド色を採用。シンクはステンレスで製作。
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